レビューのようなもの

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第4回:13の理由


カセットテープが語る真実とは? 『13の理由』予告編

 

”『13の理由』(英語:13 Reasons Why)はジェイ・アッシャーの小説を原作としたテレビドラマ。2017年3月にNetflixで配信された。脚本はブライアン・ヨーキー、製作総指揮はセレーナ・ゴメス。配信直後からその衝撃的な内容と巧みなストーリーテリングが大きな話題となり、2017年Netflixで最も観られたドラマ作品の一つとなった。2018年5月18日よりシーズン2の世界同時配信が開始した。
ティーンエイジャーのクレイ・ジェンセンが学校から帰宅すると、玄関に7本のカセットテープが入った箱が置いてあることに気がつく。それには2週間前に自殺した同級生、ハナ・ベイカーが自らこの世を去る決断をした13の理由が録音されていた。 ”(Wikipediaより抜粋)

 

 NETFLIXオリジナルドラマ。現在シーズン2まで公開中。

 

非常にメッセージ性が強く、アメリカのティーンエイジャーが直面している問題に対して一石を投じている作品。

女子学生のハンナ・ベイカが自殺し、高校では自殺防止プログラムが開かれる。学生たちはそれを退屈に受講し、献花台の前で自撮り写真を撮る。悲しみよりも他人事として捉えている空気が蔓延するなかで、同級生のクレイ・ジェンセンは自宅に差出人不明の小包が届いているのを見つける。

中には7本のカセットテープが入っており、そこにはハンナが残した最後のメッセージとして死に至る13の理由が録音されていた。テープの冒頭ではルールが説明されており、それは、13の理由にはそれぞれ原因となる登場人物がいて、すべての理由を聴いたら次の登場人物へテープを回す、というものだった。

それは、このテープを受け取ったクレイもまた彼女が死に至る理由の1つであることを意味していた。

 

最初に一言言わせてもらえば、シーズン1とシーズン2は別物として捉えたほうが良い。

シーズン1では、視聴者は主人公のクレイと共に13の理由を追っていく。自身の名前が登場する恐れを抱えながら少しづつテープを聴いていくクレイは、今まで知らなかった彼女の交友関係や彼女の身に起こった悲劇を知ることになる。そしてすべてを知った彼は、テープを残して死んだハンナの為、そしてテープを聴いてすべてを知ってしまった自分の為に、自分のできる精一杯の行動を起こす。

 

ハンナはどこにでもいる普通の女の子で、転校してきた当初は孤独だったが、徐々に友人を増やし、恋愛を経験していく。しかし、その過程で裏切りにあい、少しづつ傷つき、大きな悲劇に見舞われ、最後に差し伸べた手は掴まれることなく、そして自殺を選択する。彼女の残した理由の中には、そんな小さなことを死ぬ理由にいれるの?と疑問に思ってしまうものもあるが、それを含めて、現在子供たちが置かれている環境が彼らの繊細な心を日々傷つけている可能性を示唆している。

 

真実が少しずつ明らかになっていく様はサスペンスとして非常に楽しめ、そしてクレイや他の登場人物たちが真実と直面してどのようなアクションをとるのか、という展開がこの作品の魅力である。

クレイの目を通して彼とハンナの淡い関係性を中心とした高校生の青春物語として非常に楽しめる。当然ながら暗い話であり、もしかしたら観るのが辛いと感じる人もいるかもしれない。そう思わせる演出などもこの作品の特徴であるが、しかし単なるフィクションとして鑑賞するのであれば心を動かされる傑作である。

 

登場人物の魅力についても述べていきたい所だが、誰がテープに登場するのかを含めて楽しむ作品だと思われるので、名前を挙げるのは控えるが、1人とんでもないドグサレがいることを言及しておく。嫌われ度合でいえばゲームオブスローンズのジョフリーに匹敵するのではなかろうかと想像する。

 

 

そしてシーズン2では、ハンナの死は彼女のSOSを見逃した学校側に責任があるとして、彼女の母親が学校を提訴し、その裁判とそこで明かされるハンナの新たな真実が物語の本筋となる。

はっきり言って、物語としては蛇足である。

シーズン2を制作した意義として、ハンナが自殺をすることで悲劇の英雄となるのを否定することと、学校生活のなかで傷つき悩む被害者は大勢いるということを改めて強調したいのだと思われ、その意図は成立しているように感じられた。

しかし、『13の理由』という物語として純粋に見れば、シーズン1において少年少女たちの今後をぼやかしながらも綺麗に終わっているので、おかわりは必要なかっただろう。それでも続編が作られた理由は、この作品が持つ前述したような社会的な意義と、人気作品ほどダラダラと引き延ばされる海外ドラマの宿命によるものなのだろう。

そして最終話を見る限り、必ずシーズン3も制作されるだろう。というかそれが前提となった展開で終了していた。確かに続きが気になるが、続編はもはやハンナの13の理由とは無関係なものとなる筈だ。

 

物語の展開としては嫌な気持ちになったりイライラする場面が少なくなく、特にクレイを含めた登場人物たちが自分自身を守りながらも相手に過度の犠牲を要求するような場面が多々あるが、ある意味リアルな高校生像なのかもしれない。謎を追求していく場面においても、もう少しうまいやり方があるだろうと思うが、下手な脚本と捉えるか探偵でも天才でもない彼らなりの精一杯の行動と捉えるかは視聴者次第かもしれない。

つまらないわけでは無いが、あの素晴らしいシーズン1の続編としての期待値には届いていないというのが率直な感想である。

 

総評としては間違いなく名作であり、NETFLIXオリジナルドラマを代表する作品なので、是非鑑賞してほしい。

ただ、純粋に物語として楽しむのであればシーズン1まで、その後の展開がどうしても気になるのならば、少し嫌な気持ちになるのを覚悟してシーズン2も鑑賞するのをオススメする。シーズン3はいつ公開されるのか不明だが、個人的に言えば待ち遠しくはない。